大学院生なら、たぶん誰でも一度は迷うと思うのが、博士に進むべきか、修士を出たら就職すべきか、ということだと思います。
私自身は今、博士課程に進んでいるのですが、修士を出た後、実は一度就職しています。それから、何年か働いてお金を貯めて、博士に戻りました。
仕事を辞めたことについて、個人的に後悔はしていませんが、たぶん人によって最適な選択肢はそれぞれ違ってくるかと思います。
また、絶対に「研究or就職」の二択で選ばなくても、大丈夫だとは思います。
私のように、働いてからまた戻ってもいいですし、研究だけなら隙間時間で在野でも可能です・・!
でも、とりあえず今迷っているなら、どうやって結論を出せばいいのか。
そのことについて書いてみます。
まず、今後の大学教育の見通しを書いておきます。
2018年問題で、研究ポストは減少する
まず、やはり肝に銘じておかなければいけないのは、現在、日本の大学が置かれている状況は、かなり厳しいということ。
皆さんご存知かと思いますが、2018年問題というものがあります。
もう過ぎてますが(苦笑)
2009年にはすでに、121万人まで減っている18歳人口は、しばらく横ばいでしたが、2024年には106万人・・さらにその先は100万人を切っていくと予測されています。
18歳人口が、これからどんどん下がっていく始まりとされるのが2018年なんです。
ですが、大学進学率はすでに高いので、これ以上伸びることはありません。
ということは、大学の定員割れがますます進み、廃校になったり、統合されたりする教育機関が増えていくことになります。
イコール・・・研究教育ポストの減少!!
というのは自明のことですよね。
非常勤講師化、テニュアトラック制度がますます進む
プロジェクト型雇用
さらに、厳しい状況としては、国から大学などに支給される運営費交付金という予算が、これから毎年数パーセントずつ減らされていくことです。
大学は、独自でプロジェクト型予算を獲得したり、新入生や留学生獲得に勤めたり、予算を削ったりして、自分で生き残り戦略を立てないといけない状況です。
まず、プロジェクト型予算ですが、これは数年間、何かの題のもとに研究or教育プロジェクトを立ち上げて、何かしらの成果を挙げるものです。
「ポケモンハンターにおける恋愛傾向分析し、ユーザー獲得メカニズムを改善するプロジェクト(適当・・・)」とかを立ち上げたら、それにともなって研究員を雇い、プロジェクトが終わったら、雇い止めになってしまうわけです。
そんなわけで、任期付きのポストが増えるのではないかと推測されます。
人件費削減
さらに、各大学が財政健全化する手段として、一番手っ取り早いのは、やっぱり人件費の抑制になりますから、職員も教員も、正職員ではなく非常勤で雇う率が増えてことと思います。非常勤で雇えばまだいいですが、ある先生が定年退職で辞めたら、もうその後は補充しないケースすら、既にあります。
・・・というわけで、まず博士課程に進むのだったら、安定した生活・・・というのは、簡単に望めないことは分かるかと思います。
(主婦の方とか、実家が富裕とかだったら別ですが!)
ポスドク後何年も、非常勤講師を続ける覚悟は必要です。しかも、その先も正規の教員として就職できる保証はありません。
(もちろん、ポストがゼロになることもないので、チャンスは存在しますけれど)
テニュアトラック制の導入
テニュアトラックは、もともとアメリカの制度で、常勤教員のポストを手にいれるまでに、いろいろ審査や選別課程を設けるものです。研究者間の競争を生み出し、実績を審査することで、質の高い研究に繋がるという側面もあるとは言われています。
これが近年、日本でも導入され始めていています。ただ、日本の場合、まだ実際にどのような制度なのか不明確な部分があり、選任教員になる前に、非常勤の任期付き教員として務めなければいけないポストが増加する、ということにつながる可能性があります。
・・・こんなわけで、やはり結構、研究職を巡る見通しというのは、なかなか厳しい昨今です。
そこで、研究職で就職したければ、かなり戦略的になっておく必要はあります。
J-REC INなどで、大学教員の公募情報をチェックして、自分の分野で、どんな能力・スペックが求められているのかを知り、それを身に付けておかなければいけないです。
自分が、人生で何を一番優先したいのか考えよう!
・・・こんなわけで、厳しい現状です。
しかし、それを知っても、やはり研究職を目指したい・・・ということであれば止めません・・・。
でもその前に、何が自分にとって一番大切なことなのか、人生で、これだけは譲れない、という点は何なのか、じっくり考えてみると良いかと思います。
10個くらいは、挙げてみましょう。
- 家族
- お金
- 住みたい場所
- 喜びになること
- 労働環境
上記の面から色々考えて、優先順位を付けてみましょう。
もっと細かくいうと、こんな感じです。
- 結婚したいのか、子どもは欲しいか。
- 収入はどれくらいあれば満足か。
- 住みたい場所にこだわりはあるか。地方か都市か。日本か海外か。
- 何をやっている時が一番楽しくて、充実しているか。
- 組織で働きたいか、個人で働きたいか。
思いつかない場合は「したくないこと」「なるべく避けたいこと」を考えて、「何かを避けること」を優先順位に持ってきてもいいかもしれません。
「残業でプライベートの時間をつぶしたくない」
とか。
とりあえず、就職活動をしながら考えるのも有り!
それでも迷う場合は、やはり学問と並行して就職活動するのがいいと思います。ただ修士論文が落ち着いて書けない!ということであれば、例えば、就職活動は1日2時間だけ!とか決めて、それを守って。毎日少しずつやるようにするといいかと思います。
人間、時間が与えられれば与えられるだけ、そのタスクにかかる時間を引き延ばしてしまう傾向があるといいますから・・・(;´・ω・)思い当たるとこ多々(;´・ω・)
就職活動をして、色々な企業の話を聞いたり、そこで会った他の学生と話したりするうちに、色んな出会いがあると思いますし、会社の雰囲気なんかものぞけるので、そうしているうちに、思わぬいい会社が見つかって、「働きたい!」って気になるかもしれませんし、逆に、「やっぱり自分には研究が向いている」と思わされるかもしれません。
そんなわけで、悩んでいるよりは、ともかく動いてみることをおススメします。
就職したから研究できなくなるわけではない
それに、一度就職してしまったら、もう研究の世界には戻れなくなるということはありません。研究の世界というのは、デビューの遅い世界ですので・・・。
社会人経験をしてから、また20代後半、30代くらいで大学院に戻る人もたくさんいます。社会人として働きながら、院に通う人もいます。
それに人生何があるか分かりませんので、わりとそのあたりは、やり直せると思って、肩の力を抜いて考えてしまえばいいのではないかなーと、個人的には思います。
ただ現状、大学の雇用が35歳までとか年齢制限設けているところも割とみられるので、日本においては年齢がかさむほど、大学への就職の難易度があがってくるのは事実としてあります。外国だとまた違う国もあるかもしれませんが。
それはもう、一人ひとりの考え方なので、絶対にこうした方がいい、とはいえないのですが・・・。
私の場合も、こうして博士課程に戻ったことも数年前は予想していませんでしたので、本当に人生って分からないなあと感じているところです。