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「日本会議の研究」菅野完を読んでのレジュメと感想

 
今回は、改憲内容と直接関係ありませんが、いま安倍政権と手を携えて共に歩み、改憲を進めようとしている勢力は、どんな人たちなのか、そこに興味がありました。
 
ハイ。こういうこと書いてばかりいると偏った人と思われがちなのですが…。たぶん十年以内には来るであろう国民投票に向けて、少しでも考える材料をつくっておきたくてやってる読書会でございます。
 何も判断基準ないまま投票するのもおぼつかないため...。
 あと、これまであまりにも政治について無知できたなあと思ったので、ボチボチこれを機に勉強しておこうと思ったのでした。なので、あくまで私の意見がここに書かれるにしても、暫定的で、いろいろ模索中なので、今後変わる可能性も全然あります・・・。
 
まず、いまや政権を牛耳っている「日本会議」はなんとなく神道系の国粋主義者の集まりかなー?くらいの認識でいたが、
 
★第一感想★
思った以上に出自は新興宗教「生長の家」一色であったことに驚いた。
そして、1970年代の右翼&宗教学生運動に端を発している。
また安倍政権の政策のほとんどに、「日本会議」がバックにいることにも驚く。
 
この本は良質のドキュメントであると同時に、学生運動と宗教に身を捧げる人たちの奇妙な群像劇ともなっていて、面白いです。興味ある方は、読んであげてください。
 
では特に気になったところを要約します。
 

 

「日本会議の研究」菅野完を読む

 
★第三次安倍内閣では、19名中16名が日本会議。8割を超えていた。
 
★「日本会議」を生んだ「生長の家」とは?
谷口雅春が1930年に強烈な反共意識のもと立ち上げた新興宗教。
戦後は「明治憲法復活」「占領体制打破」を掲げて活動。学生信徒は右翼学生運動を展開した。
なお、現在はエコロジー左翼的な路線に変更していて「日本会議」とはいっさい関係していない。
 
★初の成功体験は、元号法制化運動。
1961年には、自民党すら元号維持には積極的でなかったところを、地方議会での意見書採択運動・デモ実施・著名人を招聘してシンポジウム、などという学生運動で学んだ手法を駆使して、わずか二年で元号法の立法にこぎつけた。
この団体が「日本会議」の源流である「日本を守る会」
 
.★「日本会議」の事務を取り仕切るのが「日本青年協議会」。(「生長の家学生運動」の青年組織として生まれた団体)彼らの機関紙『祖国と青年』2015年4月号には「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の総会報告が掲載されている。(平沼赳夫、古屋圭司、渡辺周などの政治家も列席
 
.「500万筆の署名獲得」「衆参合わせて480議員の賛同獲得」「35都道府県での意見書採択」という「日本青年協議会」の運動目標は自民党の「平成27年党運動方針」と酷似。
 
巻末の「改憲戦艦ヤマト」というパロディ漫画には「改憲砲発射まであと480日」というカウントダウンがある。
.つまり、ついこの前の2016年参院選に焦点を当てていた。
 
 昭和40年代から、現在の憲法否定のシナリオは用意されていた。1973年出版の生長の家パンフレットには
 
「占領憲法体制の解体は、何よりその成立の暴虐的過程を糾弾し、占領軍の強制制定のあり方が、大日本帝国憲法に於ける法的違反および、国際法違反であることをもって正統憲法復元を克ち獲らなければならないが、そのためには復憲の大義に、自己生命を捨て得る内閣総理大臣の出現(中略)しなければならない」とあった。
 
⇒まさに安倍晋三!
 「わが国を防衛する対策」のため「反憲的解釈改憲の”たたかい”」をすすめるという彼らの戦略目標も、解釈改憲で先制攻撃すら可能という、いまの安倍政権の路線と完全にだぶっている。
 
★選択的夫婦別姓阻止運動も、日本会議が大々的に繰り広げたキャンペーン。「夫婦別姓に反対し家族の絆を守る国民会議」を結成した。呼びかけ人は櫻井よしこ、長谷川三千子などおなじみのメンバー。
 また元最高裁長官の三好達は日本会議会長も務めていた。
 
★日本会議の改憲目標は9条ではなく、「緊急事態条項」と「家族条項」の追加。安倍政権は、こうした主張と共同歩調をとっている。
 
★事務能力が高い!
・署名を集めるだけではない。それを選挙や次の運動の「顧客名簿」的なものとして、電話作戦などに大活用。
・崇教真光、神社本庁、霊友会、国柱会などなどの各種宗教団体から、目標人数を動員し、会場に大型バスで乗り付ける何千人もの参加者を、整然と会場に誘導する。
 
⇒「なんとなく保守っぽい」有象無象の教団や団体を、「国家斉唱」「リベラル揶揄」などの一致点で束ね、「数」として顕在化させ、政治的圧力に変える力。
 
★日本会議の学生団体「日本文化会議」への合宿参加者のインタビューによると、「内観」「神道の儀式」「天皇信仰の徹底」など、かなり論理的でない、感覚的、カルト的な活動が行われていた。
 
★安倍首相のブレーン伊藤哲夫も、生長の家関係者(元幹部)。2004年、「チャンネル桜」(極右翼御用達のネットニュース番組】開局時に、当時幹事長に抜擢された安倍氏を招聘。「保守革命を実現するリーダーこそ安倍幹事長」と持ち上げている。安倍氏は「わたしもそういうリーダーたりえたい」と応じている。
 菅野さんは、安倍首相は他の政治家と比べ、党内基盤がぜい弱なため、日本会議などの団体につけこまれるのではないかと推測している。
 
彼らが唱える保守革命は「歴史認識」「夫婦別姓反対」「従軍慰安婦」「反ジェンダーフリー」の四点。
 菅野氏は最近、日本会議の精神はつまり「女子供は黙ってろ運動」というミソジニーに集約できるのではとネット上で発言されていた。
 
★【!重要!】改憲は伊藤哲夫の「日本政策研究センター」が示した順序「緊急事態条項の追加」「家族保護条項の追加」「自衛隊国軍化」の順番どおりに来る可能性がきわめて高い。
 
★「集団的自衛権」が合憲だという憲法学者なんてどこにいるんだ?と問われて、管官房長官が挙げたのが、西修・百地章・長尾一紘.。
 
三人とも、日本会議関係者。安倍政権は、日本会議系の人脈に頼らざるをえなくなっている。
 
★自民党稲田朋美は「東京靖国一日見真会」の講演で生長の家の経典「生命の実相」を祖母から受け継ぎボロボロになるまで読み込んだと語っている。政府が南京の記憶遺産登録を阻止しようと頼った高橋史朗も生長の家出身者。
 
⇒ただ、生長の家自体は1983年に政治活動から身を引いている。これをよく思わなかった一連の人々が、生長の家原理主義とでもいう運動を展開し、日本会議の源流となっている。
 そしていま、彼らのしてきた運動は結果的に、ヘイトデモや軍歌を歌う幼稚園などの社会現象に結びついてしまった。
 
★彼らの熱情を束ねているキーパーソンがいるのではないかと菅野氏は推察する。その人物は信者向け会合にのみ現れて説法するというが、その講和は「号泣」と「爆笑」が二分おきにくるような圧倒的なもので、若ければ心酔しているかもしれないと菅野氏。
 

感想およびコメント

 
「日本会議の研究」の最後の章は、右翼学生運動の群像を活写していた。
一水会の鈴木邦男氏も登場。マイルドで右翼なのに理性的な、ちょっと愛嬌もあるおじさん、というイメージだったが、学生の時はゲバ棒を持った左翼学生に「このやろー!」と単騎突っ込んでいくような武闘派だったという。鈴木氏は生長の家における権力争いで、はじき出されてしまったようだ。
 
・あの大川隆法の父親も、生長の家の地方講師だったそうで。最近の幸福の科学の超右な路線の理由も少し納得がいった。これが今、日本会議(生長の家原理主義)路線の自民党と選挙で票を奪い合っているのだから、興味深い事態だ。
 
・神を持たない日本人も、やはり人間の本能として、何か没頭・崇拝すべき神聖なものを求めてしまうのかもしれない。太平洋戦争時の国家神道なんてまさに、国家全体がカルト宗教に巻き込まれたようなものだったが、いまの政権周辺も、そうしたかなり特殊な信仰心を持った人達が集まっているようで、なかなか空恐ろしい。
 
・「生長の家」の教義自体については、まったく触れられていなかったので、創始者谷口雅春の教義と
日本会議・安倍政権路線のポリシーが、どのように結び付いてるのかには興味が出た。そのうちネットとかで調べてみようかな・・。
 
・とはいえ慰安婦問題に関しては、日本会議的目標は失したようにみえる。やはりアメリカの圧力の方が強かったのかもしれない。
 
 ともかく、インタビュー、イベント参加、書籍収集、など綿密に行って、日本会議の人脈や組織構造を研究した、労作でした。
 「この本のおかげで、知名度があがっていい宣伝になってます!」とか日本会議のホームページに出てた。(汗)彼らも、急にスポットライトが当たって嬉しいところはあるのではないだろうか?
 
ともあれ、神に限らず、ナショナリズムにしろ恋愛にしろ。何かを信じる心というのは、非常に両刃の剣である・・。論理が飛躍しやすくなって危険であるなあ。
 
・追記
森友学園問題で、菅野完氏も今たちまちメディアへの露出が増えている。
貶めようとする人たちからは「胡散臭い」というイメージも作り上げられているようだが、
この本を読む限り、取材力や分析力は本物だと感じる。
確かに、かなりアクの強いキャラではあるけれど、そのことは取材力や論理的能力の強さとは関係ないだろう。
菅野完氏を「なんとなく胡散臭い」と思ってしまう方々は、いちどこの「日本会議の研究」を読んでみると、見直すところがあるのではないかなあと思う。
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